011 イエスの生 The Birth of Jesus(ルカによる福音書2:1)

01❶そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た。
→アウグストゥスは、イエスが誕生した時のローマ帝国の初代の皇帝(在位:BC27~AD14年)である。
本名(全名)は、ガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌス(オクタビアヌス)である(ユリウス・カエサルの甥に当たる)が、称号のカエサル・アウグストゥスの方が有名である。
→住民登録は、ローマ帝国支配地域に在住する誰もが、ローマ帝国へ税金を納めるためになされた。すべての人は、それぞれの故郷で登録を義務付けられた。

02これは、キリニウスがシリア州の総督であったとき(AD6年)に行われた最初の住民登録である。
→キリニウスはAD6年に、シリアの総督になった。ユダヤ人の歴史家ヨセフスによれば、キリニウスはAD6年か7年に住民登録(人口調査)を行ったとされる。イエスはヘロデ大王の時代に生まれ、ヘロデはBC4年に死んだとされている。アウグストゥスの「業績録」によれば、国勢調査は3回(BC28年、BC8年、AD14年)行ったと記され、キリストの誕生前後にはローマによる国勢調査は行われていない。
従って、この聖句個所は整合性が取れず、誤りと思われる。

03❷人々は皆、登録するためにおのおの自分の町(→本籍地)へ旅立った。

04ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。
→ベツレヘム(ヘブライ語で「パンの家」の意味)は2地点(下図⓵⓶)に存在する。
また、ヘブライ語聖書では「ダビデの町」(ダビデが建てた町)とされ、新約聖書ではイエス・キリストの生誕地とされている。
⓵ユダヤのベツレヘム:エルサレムの南方8㎞にある町(海抜750m)。⇒ダビデの町
⓶ナザレの北西約9㎞にある村で、ゼブルン族が所有している(ヨシュア記19:15)。

05身ごもっていた、いいなずけのマリアと一緒に登録するためである。

06❸ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて
→創世記25:24、サムエル記上1:20、ルカによる福音書1:57

07初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。
→初めての子は、律法によると、初めて生まれた男子は神の者である。→出エジプト記34:19
→布にくるんで:この布は、埋葬の死者をくるむために墓の近くの洞窟に準備されていた「亜麻布」で、イエスは、この亜麻布を利用して、当時の習慣であった、赤子の両腕がまっすぐに伸びるようにくるまれた。
→宿屋:カタルマティ⇒居場所(ホテルではない)
・口語訳、ルカによる福音書2:7 初子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。客間には彼らのいる余地がなかったからである。
・皆が住民登録で移動していたため、空いている部屋(客間)がなかったのであろうと思われる。
→マタイによる福音書2:1a イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。
ヘロデ大王が死んだのはBC4年で、イエスは、それ以前に生まれている。