大正十五年七月二十八日 星野温泉若主人の為に草す

成功の秘訣  六十六翁 内村鑑三

一、自己に頼るべし、他人に頼るべからず。
→自分の足で立つこと、他人に頼ってはいけない。

一、本を固うすべし、然らば事業は自づ(→ず)から発展すべし。
→事業の根本を固めること。そうすれば、事業は自ずから発展する。

一、急ぐべからず、自動車の如きも成るべく徐行すべし。
→慎重に事を進め、急いではならない。自動車なども、なるべく徐行すること。

一、成功本位の米國主義に倣ふべからず、誠實本位の日本主義に則(のっと)るべし。
→成功本位の米国型経営をまねず、誠実本位の日本型経営を手本とすること。

一、濫費は罪悪なりと知るべし。
→無駄遣いは罪悪である、と知ること

一、能く天の命に聴いて行ふべし。自から己が運命を作らんと欲すべからず。
→天(神)の命(めい)に聴き従って、行動すること。自ら自分の運命を作ろうと思っ
□□てはならない。

一、雇人は兄弟と思ふべし、客人は家族として扱うべし。

一、誠實に由りて得たる信用は最大の財産なりと知るべし。

一、清潔、整頓、堅實を主とすべし。

一、人もし全世界を得るとも其霊魂失はば何の益あらんや。人生の目的は金銭を得るに非
□□ず、品性を完成するにあり。

以上

マルコによる福音書8:36
人は、たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得があろうか。