▶009-1 洗礼者(バプテスマ)ヨハネの誕生(ルカによる福音書1:57~66)
57さて、月が満ちて、エリサベトは男の子を産んだ。
58近所の人々や親類は、主がエリサベトを大いに慈しまれたと聞いて喜び合った。
59八日目に、その子に割礼(→神との契約のしるしで、律法によれば、すべてのユダヤ人男子は、神に属していることを示すために、性器の包皮を切除した→創世記17:9~14、レビ記12:3)を施すために来た人々は、父の名を取ってザカリアと名付けようとした。
60ところが、母は、「いいえ、名はヨハネとしなければなりません」と言った。
61しかし人々は、「あなたの親類には、そういう名の付いた人はだれもいない」と言い、
62父親に、「この子に何と名を付けたいか」と手振りで尋ねた。
63父親は字を書く板(→木の板に溶かしたロウを塗って作った)を出させて、「この子の名はヨハネ」と書いたので、人々は皆驚いた。
64すると、たちまちザカリアは口が開き、舌がほどけ、神を賛美し始めた。
65近所の人々は皆恐れを感じた。そして、このことすべてが、ユダヤの山里中で話題になった。
66聞いた人々は皆これを心に留め、「いったい、この子はどんな人になるのだろうか」と言った。この子には主の力が及んでいたのである。
▶009-2 ザカリアの預言(ルカによる福音書1:67~80)
→ザカリアの賛歌(67~79節):ベネディクタスBenedictus(ラテン語)
67父ザカリアは聖霊に満たされ、こう預言した。
68「ほめたたえよ、イスラエルの神である主を。主はその民を訪れて解放し、
69我らのために【救いの角】を、/僕ダビデの家から起こされた。
→未来的(預言的)完了形
→救いの角:メシア⇒イエス・キリスト
70昔から聖なる預言者たちの口を通して/語られたとおりに。
71それは、我らの(霊的な)敵、/すべて我らを憎む者の手からの救い。
72主は我らの先祖を憐れみ、/その聖なる契約を覚えていてくださる。
73これは我らの父アブラハムに立てられた誓い。こうして我らは、
→(創世記22:16~18)御使いは言った。「わたしは自らにかけて誓う、と主は言われる。あなたがこの事を行い、自分の独り子である息子すら惜しまなかったので、あなたを豊かに祝福し、あなたの子孫を天の星のように、海辺の砂のように増やそう。あなたの子孫は敵の城門を勝ち取る。地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。」
74敵の手から救われ、/恐れなく主に仕える、
75生涯、主の御前に清く正しく。
76幼子よ、お前(洗礼者ヨハネ)はいと高き方(→イエス・キリスト、神の子→ルカによる福音書1:35)の預言者と呼ばれる。主に先立って行き、その道を整え、
77主の民に罪の赦しによる救いを/知らせるからである。
78これは我らの神の憐れみの心による。この憐れみによって、/高い所からあけぼのの光が我らを訪れ(→メシア到来→イザヤ書60:19)、
→(イザヤ書60:19)太陽は再びあなたの昼を照らす光とならず/月の輝きがあなたを照らすこともない。主があなたのとこしえの光となり/あなたの神があなたの輝きとなられる。
79暗闇と死の陰に座している者たちを照らし、/我らの歩みを平和の道に導く。」
80幼子は身も心も健やかに育ち、イスラエルの人々の前に現れるまで荒れ野(→エルサレムと死海の間にあるユダの山地近辺の荒野)にいた。
→アハブがイスラエル王国の王(在位:BC869~850年)であったとき、預言活動を開始したエリヤは「毛衣を着て、腰には革帯を締め」(列王記下1:8)とあります。正に洗礼者ヨハネは、預言者エリヤと同じ格好をして、荒れ野で生活をしていた。