幸せを探す王様

幸せを探す王様

昔々、あるところに王様がいました。りっぱな宮殿に住んで、美しいお妃やかわいい王子たちや忠実な家来たちに囲まれて、なに不自由なく暮らしているのに、この王様はいつも憂うつな顔をしているのです。

自分は何でも持っているけど、ただ一つ思うにまかせないことがある。それは、自分がまだ幸福というものを知らないことだ。どうしたら幸福になれるのだろう。そう考えてクヨクヨしているからでした。

あるとき、遠い国から名高い占い師がやってきました。未来のことでも、人の願いごとを叶える方法でなんでも教えてくれるという評判です。

さっそく王様の前に呼び出された占い師は、こう答えました。

「幸福になる道ですか?なんでもありません。国中を探して、本当に自分が幸福だと思っている者を見つけたら、その人の着ている下着をゆずってもらって、それをご自分がお召しになればよいのです。」

王様はすぐに、一番信用できる大臣に言いつけ、その幸福な人間を探しに行かせました。

大臣は、金持ちや有名人やいろいろな人を訪ね、「あなたは幸福ですか」と尋ねました。でも、みんな、「とんでもない。それどころか・・・・・・・。」と愚痴や不満を言い出します。

国中を歩き、尋ねまわり、三カ月がたちました。それでも幸福な人は見つかりません。

「世の中に幸福な人間などいないのか」

大臣は疲れはて、山の中をトボトボ歩いていると、楽しげに歌をうたっているひとりの羊飼いに出会いました。ボロ服を着て、羊といっしょに草の上にすわっているのですが、あまりにも晴々とした顔をしているので、ためしに聞いてみることにしました。

「あまえさんは、幸福かね?」

「ああ、お日さまは暖かく照らしてくれる。牝牛はうまい乳を飲ませてくれる。他人は親切だし、僕はみんなが大好きだ。まったく幸福だと思うよ。」

この男だ!と確信した大臣は喜びをかくしきれずに言います。

「おまえさん、おまえさんの下着をゆずってくれんかね。」

「下着、ダメだよ。」

「いや、なあに、金はある。」

「金の問題じゃないよ。僕は下着を着ていないんだよ。」

—————————————————-カンドウ全集 著者:池田敏雄 編(中央出版)

わたしは知った/人間にとって最も幸福なのは/喜び楽しんで一生を送ることだ、と
———————————————————————◆◆–(コヘレトの言葉3章12節)

忍耐した人たちは幸せだと、わたしたちは思います。あなたがたは、ヨブの忍耐について聞き、主が最後にどのようにしてくださったかを知っています。主は慈しみ深く、憐れみに満ちた方だからです。(ヤコブの手紙5章11節)