善いサマリア人(ルカによる福音書10:25~37)

▶すると、ある律法の専門家が立ち上がり、イエスを試そう(→ギリシア語では、「行き過ぎるまで試す」「徹底的に試す」という意味である)として言った。「先生、何をしたら、永遠の命を受け継ぐことができるでしょうか。」

▶イエスが、「律法(→旧約聖書=ユダヤ教聖書の最初のモーセ五書:創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)には何と書いてあるか。あなたはそれをどう読んでいるか」と言われると、彼(=ある律法の専門家)は答えた。「『心を尽くし、精神(→魂soul)を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい、また、隣人を自分のように愛しなさい』とあります。」
→レビ記19:18 復讐してはならない。民の人々に恨みを抱いてはならない。自分自身を愛するように隣人を愛しなさい。わたしは主である。
→申命記06:05 あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。

▶イエスは言われた。「正しい答えだ。それを実行しなさい。そうすれば命が得られる。」

▶しかし、彼は自分を正当化しようとして、「では、わたしの隣人とはだれですか」と言った。

▶イエスはお答えになった。「ある人がエルサレムからエリコへ(→海抜マイナス244mにあるエリコは、海抜762mにあるエルサレムの北東約26㎞にある)下って行く途中、追いはぎに襲われた。追いはぎはその人の服をはぎ取り、殴りつけ、半殺しにしたまま立ち去った。

▶ある祭司がたまたまその道を下って来たが、その人を見ると、(面倒に巻き込まれたくなかったので)道の向こう側を通って行った。同じように、(神殿に奉仕する)レビ人もその場所にやって来たが、その人を(横目でちらりと)見ると、道の向こう側を通って行った。
→当時、祭司は律法により、死体やけが人の血に触れることを恐れていた。汚れれば、再び神殿での務めに戻るためには清めの儀式をしなければならなかった。また、レビ人も祭司を補佐していたが、同じように汚れることを恐れた。

▶ところが、(常日頃ユダヤ人に軽蔑されていた)旅をしていたあるサマリア人は、そばに来ると、その人を見て憐れ(→自分の臓器が痛むくらい、断腸)に思い、近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をして、自分のろばに乗せ、宿屋に連れて行って(一晩中)介抱した。そして、翌日になると、デナリオン銀貨(→ローマの銀貨、1デナリオン=1ドラクメ、1日の農夫の日当に相当する)二枚を取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに払います。』

▶さて、あなたはこの三人の中で、だれが追いはぎに襲われた人の隣人になったと思うか。」

▶律法の専門家は言った。「その人を助けた人です。」そこで、イエスは言われた。「行って、あなたも同じようにしなさい。」
→「行って、あなたも同じようにしなさい。」(聖書協会共同訳)
→ “Go and do likewise.” (NEW INTERNATIONAL VERSION)
→ 「そのとおりです。あなたも同じようにしなさい。」(リビング・バイブル)

<参考> 永遠の命(聖句一部抜粋)

<参考>ユダヤ人とサマリア人との間にある教理や礼拝を巡る対立
⓵かつてサマリア人は、エルサレムに神殿を再建することに参加したい(エズラ記4:1)と望み、願い出たが、周辺異教文化の人々との結婚やユダヤ人にとって正当的でない見解の故に、その機会を与えられなかった(結果として、サマリア人は自分たちの神殿をゲリジム山に建てた)。そして、ネヘミヤがエルサレムの城壁を建てるのに専念していた時、サマリア人は、それを阻止しようと激しく邪魔をした(ネヘミヤ6:1~14)。
⓶サマリア人は自分たちの神殿をゲリジム山に建て、モーセが特別に国として礼拝する場所として示したのはそこだと主張し、サマリア人の偶像礼拝の宗教はこうして永続された。
⓷サマリア人はモーセの五書だけを受け入れ、他の預言者の書、ユダヤ人の伝統を拒絶した。
以上の理由から、彼らの間には全く和解できない違いが起こり、ユダヤ人はサマリア人を人類の中で最悪の人種だとみなし(ヨハネによる福音書8:48)、彼らとは全く付き合いをしなかった(ヨハネによる福音書4:9)。

ユダヤ人とサマリア人の間の憎しみにもかかわらず、サマリア人に平和の福音を宣べ伝えて(ヨハネ4:6~26)、イエスはその間の壁を壊されました。そして、イエスの後に来る使徒たちもイエスの模範に従いました(使徒言行録8:25)。

<参考> 傷口の正しい処置の方法
これまでの医学知識として、傷口は、①消毒する、②乾かして治す、③ガーゼを当てて保護する、が常識でした。しかし今は、これらが間違いだと言われています。
①消毒はするな!
傷口は【水で洗浄する】だけで十分で、消毒をすると、皮膚の表面にいる悪い菌から守ってくれる良性の常在菌まで殺す事になり、かえって悪い菌が体内に入りやすくなり、細菌に感染する危険性が高まる。
②傷を乾かすな!
傷は、濡れていないと治らない。傷が乾燥すると、皮膚の再生をストップさせてしまうからです。傷がジュクジュクしているのは、その部分を治そうとしているからで、化膿しているのではない。傷に、【ワセリンを塗る】ことで乾燥を防止できます。
③ガーゼは使うな!
ガーゼは傷を乾燥させ、剥がす際も、傷と固着し、痛みと出血を伴うので逆効果。傷口にワセリンを塗った後、【ラップや油紙などで傷を覆う】(乾燥を防ぎ、滲出液がこぼれ落ちるのを防げるものであれば、身近にあるもので十分)。