018 バプテスマのヨハネのメッセージ
(ルカによる福音書3:7~18)
&ユダヤ教の四派(ファリサイ派、サドカイ派、熱心党、エッセネ派)

神の国の到来
07そこで(神の国の到来を訴え続けている)ヨハネ(→レビ部族)は、洗礼を授けてもらおうとして出て来た群衆に言った。
→群衆:⓵神に愛されている契約の民、⓶指導者の間違った教えに惑わされている民
蝮の子らよ、差し迫った神の怒りを免れると、だれが教えたのか。
→蝮の子らよ(≒サタンの子らよ):迫りくる神の裁きを考えると、どうしてもこのような厳しい言葉を言い続ける必要があった。
→バプテスマを受けに来る人たちに、ヨハネはきびしい口調で説教しました。「まむしの子らめ!おまえたちは神様に立ち返ろうともせずに、ただ地獄から逃れたい一心でバプテスマを受けようとしている(LB)。

08悔い改めにふさわしい実を結べ。『我々の父はアブラハムだ』などという考え(→選民意識)を起こすな。言っておくが、神はこんな石ころ(→異邦人をたとえていう比喩的言葉→選民意識を持つユダヤ人は異邦人を見下していた)からでも、アブラハムの子たちを造り出すことがおできになる。
→アブラハムの子たち:ヨハネはユダヤ人に、アブラハムとサラの子孫というだけで、神の国に入れると教えられるなど、特権的な生き方ができると考えるなと警告した(ヨハネによる福音書8:33)。

09斧は既に木の根元に置かれている。良い実を結ばない木はみな、切り倒されて火に投げ込まれる。」

マタイによる福音書3:7~10
ヨハネは、ファリサイ派やサドカイ派の人々が大勢、洗礼を受けに来たのを見て、こう言った。
「蝮の子らよ、差し迫った神の怒りを免れると、だれが教えたのか。悔い改めにふさわしい実を結べ。
『我々の父はアブラハムだ』などと思ってもみるな。言っておくが、神はこんな石からでも、アブラハムの子たちを造り出すことがおできになる。
斧は既に木の根元に置かれている。良い実を結ばない木はみな、切り倒されて火に投げ込まれる。

※書き出しが、ルカと少し異なり、“ファリサイ派やサドカイ派の人々が”で始まっている。ファリサイ派やサドカイ派の人々は普段は敵対関係にあるが、このときは共通の関心事の為、結束したのか、荒れ野に出て来ていた。この聖句から、ファリサイ派やサドカイ派の人々は、ヨハネからバプテスマを受けるのではなく、ヨハネのバプテスマの様子を観察に来たことがが理解できる。
→ユダヤ教の四派 ファリサイ派やサドカイ派等(PDF版)

神の国にふさわしい生活
10そこで⓵群衆は、「では、わたしたちはどうすればよいのですか」と尋ねた。

11ヨハネは、「(余分に)下着を二枚持っている者は、一枚も持たない者に分けてやれ。食べ物を持っている者も同じようにせよ」と答えた。

12⓶徴税人も洗礼を受けるために来て、「先生、わたしたちはどうすればよいのですか」と言った。
→徴税人:ローマ帝国は徴税の権利書(徴税権)を発行した(権利書をもらうために、ローマに支払う税額は全額前納であったため、徴税人が行うユダヤの民からの税の徴収はかなり乱暴であったと思われる)。この権利書は一般に裕福な異邦人に与えられ、雇われた地元の人が税を徴収した。徴税人は、実際にローマが請求する以上の金額を取り立てていた。イエスの時代、人はこのような徴税人を嫌い、また宗教的に汚れていると考え、裏切り者であると見なした。

13ヨハネは、「規定以上のものは取り立てるな」と言った。

14⓷兵士も、「このわたしたちはどうすればよいのですか」と尋ねた。
ヨハネは、「だれからも金をゆすり取ったり、だまし取ったりするな。自分の給料で満足せよ」と言った。
→兵士は、ヘロデ・アンティパスに雇われたユダヤ人兵士で、徴税人の税の徴収が円滑に進むように、徴税人を助けた。中には、悪質な兵士もいて、脅迫によって金品を奪った。

神の国をもたらすメシア
15民衆はメシア(→神が選び、油注がれた者の意味)を待ち望んでいて、ヨハネについて、もしかしたら彼がメシアではないかと、皆心の中で考えていた。

16そこで、ヨハネは皆に向かって言った。「わたしはあなたたちに水で洗礼を授けるが、わたしよりも優れた方が来られる。わたしは、その方の履物のひもを解く(→異邦人奴隷の仕事)値打ちもない。その方は、聖霊と火であなたたちに洗礼をお授けになる
→履物のひもを解く:ユダヤ人奴隷は、当然、主人に仕えるが、くつのひもを解くことまではしなかった。それは、異邦人の奴隷の役割(履物のひもを解くことは、当時、最低の仕事と考えられていた)であった。
→火は、⓵否定的な意味では、神の裁き、⓶積極的な意味では清めのバプテスマを連想させる。ヨハネの洗礼(バプテスマ)は水で体を清め、神に立ち帰ることを促す。イエスの名による洗礼は、人を罪から清め、神の生命に与かり、「新しい人」になることを意味する。

17そして、手に箕を持って、脱穀場を隅々まできれいにし、麦を集めて倉に入れ、殻を消えることのない火で焼き払われる。」
→脱穀場:農夫は脱穀用の箕(農業用フォーク)を使い、穀粒と殻とをすくい上げて空中に放り投げる作業をした。殻は軽いので、風に飛ばされ、地面に落ちた穀粒だけを集めた。

18ヨハネは、ほかにもさまざまな勧めをして、民衆に福音を告げ知らせた。