017 バプテスマのヨハネの登場
(ルカによる福音書3:1~2、マルコによる福音書1:2~6)

▶ルカによる福音書3:1~2
❶(悪名高いローマ帝国の第2代)皇帝ティベリウスの治世の第十五年(→AD28/29)、
→皇帝ティベリウス:ティベリウス・クラウディウス・カエサル、初代皇帝アウグストゥスの養子で、養子となる以前の名前は実父と同じティベリウス・クラウディウス・ネロ。在位:AD14~37、ローマ帝国を統治した。
❷(皇帝ティベリウスが任命した)ポンティオ・ピラトが(第5代の)ユダヤの総督(→AD26~36)、
❸ヘロデ(→ヘロデ大王〈在位:BC37~4〉の息子ヘロデ・アンティパス)がガリラヤの領主(在位:BC4~AD39)、
→ヘロデ・アンティパス(弟)は、ヘロデ大王の孫娘ヘロディアに対して、兄のフィリポと別れ、自分と再婚するように口説き、後に、ヘロディアと結婚している。ヘロデ家はエドム人でユダヤ人ではない。
❹その兄弟フィリポ(→ヘロデ・アンティパスの腹違いの兄でフィリッポスとも言う)がイトラヤとトラコン地方の領主(在位:BC4~AD34)、
→ヘロデ大王の息子フィリポとヘロデ大王の孫娘ヘロディアとの間に生まれたのが、悪名高いサロメで、洗礼者ヨハネの首をヘロデ・アンティパスにはねさせ殺した(ただし、サロメと言う名前は聖書には登場しない→マルコによる福音書6:14~29)。
❺リサニア(→聖書にはここにしか登場しない、不明の人物)がアビレネの領主、
❻アンナスとカイアファとが大祭司であったとき、神の言葉が荒れ野でザカリアの子ヨハネに降った
→アンナスは、AD6年から15年までユダヤの大祭司、その養子カイアファもAD18年から37年まで大祭司であった(ルカによる福音書22:54)。大祭司は終身職であり、引退しても、大祭司と言う称号が就き、実権はアンナスが握っていた(旧約時代、祭司は30歳から奉仕を始め、50歳で引退した)。
→ヘロデ大王にまつわる人物(Fileヘロデ家系図より一部を抜粋)

【参考】 新約聖書にある「降った」

▶マルコによる福音書1:2~6
02~03預言者イザヤの書にこう書いてある
「見よ、わたしはあなたより先に使者を遣わし、/あなたの道を準備させよう。荒れ野で叫ぶ者の声がする。『主の道を整え、/その道筋をまっすぐにせよ。』」
→預言者イザヤの書にこう書いてある:当時の記述法である。
❶イザヤ書40:3 呼びかける声がある。主のために、荒れ野に道を備え/わたしたちの神のために、荒れ地に広い道を通せ。
❷イザヤ書以外でも次のように記されている。
⓵出エジプト記23:20:見よ、わたしはあなたの前に使いを遣わして、あなたを道で守らせ、わたしの備えた場所に導かせる。
⓶マラキ書3:1 見よ、わたしは使者を送る。彼はわが前に道を備える。あなたたちが待望している主は/突如、その聖所に来られる。あなたたちが喜びとしている契約の使者/見よ、彼が来る、と万軍の主は言われる。
→イザヤ(「ヤハウェは救い」、「ヤハウェの救い」という意味)は、記述預言者の中、最大の人物と言われた。アモツの子(列王記下19:2)としてエルサレムで生まれ育ち、王ウジヤの死んだ年、BC742/740/735年20歳の頃(イザヤ書6:1~13)にユダ王国の首都エルサレムで預言活動を開始した。最も新しい預言は、BC701年、アッシリア王センナケリブによるエルサレム包囲である(イザヤ書37:6~7)ので、約40年にもわたって預言活動をしたイスラエルの代表的な預言者である。伝説によれば、マナセ王時代に殉教した。

そのとおり、
04洗礼者ヨハネが(ユダヤの)荒れ野に現れて、罪の赦しを得させるために悔い改めの洗礼を宣べ伝えた。
→洗礼者は、浸す者(直訳)を意味し、「浸す」(バプテイゾー)に由来する。
→聖書での「荒れ野」は、人間が神に反逆した場所であり、また神の救いが起きる場所でもある(詩編106:13~33、ホセア書2:16~17)。
→悔い改めの洗礼:ヨハネは水による洗礼(バプテスマ)を授けたが、これは過去の生活の洗い清めを象徴した。ヨハネは人々に神のもとに立ち帰り、罪の赦しを得るように教えた(ルカによる福音書3:3)。人が神に背き、神の命令に従わない時に罪と見なされる。
→ヨハネは慈しみ深いの意味で、彼は預言者エリヤの再来と信じられた。

05ユダヤの全地方とエルサレムの住民は皆、ヨハネのもとに来て、罪を告白し、ヨルダン川で彼から洗礼を受けた。
→ユダヤはパレスチナの南部を指す。BC11世紀頃、イスラエル十二部族の一つであるユダ部族が、カナン(地中海とヨルダン川・死海に挟まれた地域一帯の古代の地名)と呼ばれたこの地域に定住した。エルサレムはイエスの時代、礼拝の最も重要な中心地であり、そこに神殿が建てられていた。ヨルダン川はパレスチナで最長の川で、ヘルモン山麓、ガリラヤ湖を通って死海へと注いでいる。

06ヨハネはらくだの毛衣を着、腰に革の帯を締め、いなごと野蜜を食べていた。
→らくだの毛衣:洗礼者ヨハネの衣は、預言者エリヤの衣と酷似している(列王記下1:8)。
→いなご:乾燥いなご(レビ記11:22)

【参考】 旧約聖書のマラキ書が完成(BC440頃~400頃)した預言者マラキの時代から新約聖書が書かれる(イエス・キリストが登場する)までの約400年は「中間時代」あるいは「沈黙の時代」と言われています。