マソラ(Masora、マソラー/マソレテMasoretes)
ユダヤ教においてヘブライ語聖書(タナハ)を正確に伝承し、編集・注釈・校訂してきた学者や文書管理者の総称。
彼らの活動は主に西暦6世紀から10世紀ごろの間に行われ、特に中世におけるヘブライ語聖書の標準化と保存に大きく貢献した。最も影響力が大きく、現代のヘブライ語聖書(マソラ本文)の基礎を作ったティベリア学派(特にベン・アシェル家とベン・ナフタリ家)は有名です。
元々、ヘブライ語聖書の本文には母音記号や句読点がなく、しかも、手書きで写本されていたため、誤記や異読が起こりやすかった。そのため、聖書本文の正確性を保つために登場したのがマソラの学者たちです。彼らの成果は、「マソラ本文(Masoretic Text)」として現在のユダヤ教およびキリスト教(旧約聖書)の根幹となっています。代表的な写本には、アレッポ写本(10世紀)、レニングラード写本(1008年頃、現存最古の完全なマソラ本文)があります。
彼らの功績として、①母音記号の付与(ニクダー:ヘブライ語にはもともと母音記号がなく、子音だけで書かれていました。マソラの人々は、正確な読み方を後世に伝えるために、母音記号を開発し、聖書本文に追加した)、②アクセント記号(カンタレーション:読み上げの抑揚や節回しを示す記号を加え、朗読の正確さと美しさを保つようにした)、③注釈の付与・統計情報の提供(マソラ注記:稀な単語や特殊な語法がある場合、注記を加えた。他、「この単語は聖書全体で何回出てくるか」といった統計情報も記した)、④異読の記録と校訂(異なる写本間で異なる読みがある場合、それらを比較し、どれが正統とされるべきか判断し、本文の標準化を図った)等があります。
