Re-やすらぎの刻〜道(テレビ朝日2019.09.25放送、脚本:倉本聰)

・・・・・・・突然、何のきっかけもなく、いくつかの情景が私(菊村栄-シナリオライター:石坂浩二)の中に浮かんだ。

律子(菊村律子-舞台女優、認知症を発症し、金婚式を前に他界:風吹ジュン)と私の過去の姿だ。

昔、若いころ、私たちはしょっちゅう互いを見つめ合い、何かをしゃべり合い、そして笑った。
笑い合うことが二人の幸せだった。

だが、幸せの形は、そのうち変わった。

見つめ合うことは次第に少なくなり、並んで何かを見つめることの方が、あるいは、聞くことも感じることが・・・。

そして同じことに心打たれ、語り合うのではなく、同じ感動を心の中にしっかり共有して、黙って並んで歩く方のことが恋の新しい形になってきた。

~略~

律子、今、俺の隣にお前が並んでいないことが寂しい。俺と全く同じ感動を共有してくれる者がいないことが、本当に心から寂しくつらい・・・・・・・。

見よ、わたしの見たことはこうだ。神に与えられた短い人生の日々に、飲み食いし、太陽の下で労苦した結果のすべてに満足することこそ、幸福で良いことだ。それが人の受けるべき分だ。(コヘレトの言葉5章17節)

短く空しい人生の日々を、影のように過ごす人間にとって、幸福とは何かを誰が知ろう。人間、その一生の後はどうなるのかを教えてくれるものは、太陽の下にはいない。(コヘレトの言葉6章12節)
JR北海道 根室本線「布部駅」前 2018年5月撮影