出エジプト記7章から10章にかけての記録は、イスラエルの神とエジプトの神々との間に起こった、霊的戦いの物語である。エジプトのファラオは自らを神と見なし、エジプトには多数の神々が礼拝されていた。主なる神は、これら偶像の力を否定し、ただ御自身こそが真の創造主であることを、十の災いを通して明らかにされた。
最初の奇跡は、アロンの杖が蛇に変わり、エジプトの魔術師たちの蛇を飲み込む場面である。これは、王権や神性の象徴とされたコブラ(女神ウアジェト)の権威が、主によって打ち破られたことを象徴するものである。このようにして神は、エジプトの偶像の力が空虚であることを明らかにされた。
災いはエジプトの神々に対する裁きであった。ナイル川が血に変わった第一の災いは、命の源とされたナイルの神ハピに対するもの。蛙の災いは生殖の女神ヘケト、虫の災いは大地の神ゲブに向けられた。それぞれの神は何の力も持たず、生ける神の前に無力であることが明らかにされた。
続く災いでは、家畜の死やはれ物、いなご、暗闇が襲ったが、これらもエジプトの医術や豊穣、光の神々を打つものであった。とくに太陽神ラーが支配するとされた光が消え、イスラエルの民の住む地だけが照らされた時、神と偶像の違いが決定的に示された。
ファラオの心がかたくなになったことについては、最初の5つの災いまではファラオ自身の選択によるとされており、6つ目以降、神が彼の心をかたくなにされたと記されている。これは、神がファラオの自由意志を無視して強制したのではなく、ファラオ自身の頑なさをそのままにされた、つまり彼自身の選びを尊重された結果である。
参考:人類のあけぼの 第23章 エジプトの災害 他