難に関する提言

新型コロナウイルス感染リスクのある今、あらためて災害時の『避難』を考えましょう
2新型コロナウイル      ス感染2020 年5月 15 日 日本災害情報学会長 片田敏孝

新型コロナウイルスの感染拡大が未だ収まらないなか、これから本格的な出水期を迎えます。一昨年の西日本豪雨(平成 30 年7月豪雨)、昨年の台風 19 号(令和元年東日本台風)など、毎年のように災害が発生しています。新型コロナウイルスの感染リスクを避けることを念頭におきながら、あらためて災害時の避難のポイントを皆さんと確認したいと思います。

自宅が浸水する可能性がない場所、土砂災害の危険がない場所、マンションの上層階の場合には、在宅避難(その場に留まる)ということも重要です。まずはハザードマップ・防災マップ等で自分の家の安全性を確認して、自宅外に避難すべきかどうか検討することから始めましょう。その上で、自分の家が危険な場所にあるならば、より安全な場所に早めに避難することが重要です。

新型コロナウイルスの感染リスクにかかわらず、いざという時にどう行動すべきか、一人ひとりがあらかじめ考えておきましょう。

▶要点1: 避難所以外の避難(分散避難)も選択肢です
災害時には、避難所に行くことだけが避難ではありません。在宅避難やホテル、親戚や知人宅への避難も選択肢です。自宅が頑丈な建物の高層階や危険な区域でないなど、安全が確保されている場合は自宅に留まりましょう
新型コロナウイルスの感染リスクのある状況では、ホテル、親戚や知人宅への避難は、避難所での3密(密閉・密集・密接)を避けるためにも有効です。

▶要点2: あらかじめハザードマップ・防災マップ等で危険の有無や程度を確認しておきましょう
ハザードマップ・防災マップ等を利用して、避難場所(自宅、知人宅、避難所など)の安全性をあらかじめ確認しておきましょう。なお、川に近い場所、低い場所、急峻な斜面の近くなどでは、たとえハザードマップ・防災マップ等に図示されていなくても危険な場合があるので注意しましょう。また、建物の高さや構造によっても安全性は大きく変わります。

▶要点3: 大雨「警戒レベル」の意味を正しく理解しておきましょう
風水害の危険が迫ってきた場合、その危険度に応じた「警戒レベル」が発表されます。
避難に時間を要する人とその支援者や、特に災害の危険性が高いところにいる人は「警戒レベル3:高齢者等避難」の段階で避難を開始し、「警戒レベル4:全員避難」の段階では危険な場所にいる人全員が速やかに避難をすることを意味しています。「全員避難」とは、すべての人が避難所に行くことを示したものではありません。

新型コロナウイルス感染症が蔓延する今ですが、できるだけ3密を避けつつ、避難所への避難は、命を守る最終手段として、躊躇なく選択してください。また、自治体は、避難所での3密を避けるためにも、避難所以外の施設も避難先として積極的に活用できる体制を整備してください。この提言が、自分の命、大切な人の命を守るために、住んでいる地域や感染拡大の状況も踏まえ、一人ひとりが安全な避難について考える契機となれば幸いです。

(注記)
1.ここでいう「避難所」とは、指定緊急避難場所、指定避難所等自治体が指定する避難場所も含む概念で、地域の公民館など災害時に住民が避難する場所として認知されている建物等を総称しています。
2.「在宅避難」、「分散避難」は、「避難所に集まることだけが避難ではない」という点を強調するため使っています。